大判例

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神戸家庭裁判所 昭和46年(家)492号・昭46年(家)493号 審判

〔主文〕本件申立をいずれも却下する。

〔理由〕一 申立

事件本人は昭和四六年一月二六日精神分裂病の診断を受け、同日財団法人○○会○○病院に入院中であるが、同人の妻きくは所在不明であるので、保養義務者の順位を変更し、事件本人の扶養義務者中から保護義務者の選任を求める。

二 当裁判所の判断

(1) 本件調査の結果によると次の事実が認められる。

事件本人は、一〇数年前郷里佐賀県を去つて神戸市に来り、最近は神戸市兵庫区○○町○○△丁目△△中西廃品回収問屋の店の一隅のバラックで単身居住し、数年以前より妻きくと事実上離婚し、きくは現在行方不明である。事件本人は昭和四六年一月二六日精神分裂病の診断を受け、神戸市○○区○○○町、財団法人○○会○○病院に入院中である。事件本人の扶養義務者として、母ゆきえ(明治三五年七月一五日生)、兄宮本益夫(大正一〇年一〇月一四日生)、姉官本ミツ(大正一三年一月一四日生)、妹国岡キヨ子(昭和八年四月二七日生)が現存するが、いずれも遠隔地の佐賀県下や長崎市内に居住しているのみならず、事件本人とは同人が来神以来一〇数年間音信不通であつた。しかも、事件本人とは二〇数年前、親、兄、姉と意見が合わず、家出したが、佐賀県下を転々していた数年の間は、母、兄、姉らに度々金を無心し、あるいは実家の家財を持ち出したりして、迷惑をかけていた。かつ、母ゆきえは既に六九歳の高齢で、数年以前から高血圧、心臓病を病み、立居も不自由であり、その生計は専ら孫宮本惣一の農業収入に依存している。妹国岡キヨ子は、国岡茂年と婚姻し、一三歳と一〇歳の二児を抱えているが、病弱のため入院中である。そして扶養義務者四名はいずれも身体障害、家庭事情および事件本人との従来の対人関係からその保護義務者となることを強く拒否している。

(2) 以上認定の事実によると、事件本人の扶養義務者四名はいずれも、遠隔地居住、身体障害、事件本人との従前の対人関係等から精神衛生法二〇条の保護義務者としてその義務を遂行させることが適当でないことは明らかである。かかる場合には、同法二一条の定めるところにより精神障害者の居住地を管轄する地の市町村長が保護義務者となるものと解するのが相当である。けだし、現実に保護義務を行わせることが適当でないものを保護義務者に選任することは矛盾であるばかりでなく、同法の所期する精神障害者の保護を欠くこととなるからである。「扶養義務者数人ある場合において、それらの者がすべて遠隔地居住等のため保護義務を行わせるのに適当でないときでも、家庭裁判所は、保護義務を行わせるのに比較的適当と認める者を選任するほかはない」との見解には当裁判所は賛同しえない。よつて、保護義務者選任の申立を却下し、保護義務者順位変更の申立も、その申立の利益がないから、却下することとする。(柴山利彦)

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